ギア・ドール

「あ、そうなの?・・・残念。」


 本当に顔イッパイに残念そうな顔を浮かべて、キラは再び台所に顔を移す。


 しばらくしていると、鼻歌がそこから聞こえてきた。


 それを眺めながら、思わず、海人の口からため息が漏れる。


「いい子じゃないの?」


 リビングの机に腰掛けた途端、アルクが声をかける。


「病人をこき使うな・・・。」


「彼女がやりたいって言うものだからね・・・。飲むだろう?」


 言いながら、アルクが差し出したのはウィスキーのボトル。


 よく見ると、机の上にはグラスが3つ用意されている。


「最後の晩餐か?」


「まあね・・・。」


 そういわれると、断れない。


 空のグラスを右手に持つと、アルクの方に差し出す。


 それを受けて、コップに注がれるウィスキー。


 返すように、自分もアルクのコップにウィスキーを注いで。


「乾杯。」


 音頭はアルクが取った。

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