ギア・ドール

「その中で、もっとも戦闘能力に長けていた、鈴蘭さんを人工知能として使ったわけか?」


 報告書を読み終わった海人が、そんな言葉でまとめた。


「元々、鈴蘭って人は人工知能候補の一人だったらしいし、特に剣術については、天才的な能力を持っていたらしいからね・・・。」


 確かに、弁財天の剣術はとても並みの腕ではなかった・・・・。


「・・・・難儀やな?」


 思わず、口に出た。


「まあね・・・。あ、読み終わったのなら、その紙燃やしておいてくれよ。キラに見つかったら厄介だ。」


 当然。


「わかってる。」


 それだけ返事を返すと、海人は報告書を丸めて、ポケットにしまう。


「これで・・・すべて終わったのかな?」


 アルクが、深刻そうに口を開く。


「だと、ええけどな・・・。とりあえず、もうこんなことは、勘弁や」


 弁財天。


 純白のボディを持ち、史上最大の出力と重量を持ったギア・ドール。


 20以上のスラムの住人を殺害し、スラムの町の10分の1を廃墟に変えた。


 海人たちが失ったモノも決して少なくはない・・・。


< 226 / 232 >

この作品をシェア

pagetop