ギア・ドール

「まったくだ・・・。」


 アルクがそこまで口にしたところで、唐突にリビングの電話がなる。


 部屋の隅についてあるテレビ電話。


 昔は菫から、よくかかってきた電話。


 ・・・・・すべては、そこから始まった・・・・・・。


 だが・・・・もう、彼女がそこに出ることはない・・・。


「誰や?」


 席を立ち、海人が通話ボタンを押すと、そこに映るのは黒髪のショートヘアーをした可愛らしい女性。


 大きな目にちょっと低めの鼻。


 海人と同じく記憶を失った女性・・・。


 その名前をキラという。


『あ、もしもし。海人?』


 画面越しに自分の顔が見えているのだから、わざわざ確認する必要もないのだが、名前を尋ねるキラ。


「ああ・・・どうしたんや?」


 墓参り先で何かあったのだろうか・・・?


『どうしたんや・・・じゃないよ?さっきジン爺さんに聞いたんだけど、今から3時間も前にマートル基地の攻防戦終わったって・・・。せっかく、大規模な戦闘だったのに、早く行かないと、獲物なくなっちゃうよ。なにリビングでくつろいでいるのさ?』


 ・・・・え?


「ホンマか?」


 キラじゃなく、振り返ってアルクに尋ねる。


 それに対して、アルクは黙ってリビングのテレビのスイッチをつけるのが見えた。


 途端に流れ出す、アトランテ所有のマートル基地陥落のニュース。


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