ギア・ドール

 人工太陽の光は灰色の雲で遮られていて、昼間だというのに電気をつけないと、暗くて周りが良く見えない。


 それなのに、風は一向に吹くことはなく、夏特有の熱気と湿気はしっかりと、肌を通じて伝わってくる。


 そんな、ただ、そこにいるだけで気持ちの悪くなってきそうな天気を、扇風機で何とか打開しながら、二人の男が10畳ほどのリビングでラーメンを食べていた。


 一人は、黒髪の短髪。若干つりあがった目を持つ意外はこれといった特徴を持ち合わせいない、黒パンツに、黒ジャケットという、全身を黒の衣装で身にまとった青年。


 名前を海人という。


 彼の座っている4人がけの木造テーブルに置かれているのは、具が一切入っていない、麺と汁だけの簡素なラーメン。


 ・・・・今日で四日連続。


 合計9食め。


 いい加減飽きてきているが、他に食べるものがないため仕方がない。


 金がないのだ。当然、金になるような仕事も・・・。


「・・・ねぇ、海人。」


 しかし、それを認めたくない男が一人。


 海人の目の前に腰掛ける男。


 長身で痩せ型、淡い金色をした髪の毛と細く垂れ下がった目つきは、一見すると他人に優しそうな印象を与えるが、それ以上に、ジーパンにTシャツという簡素な格好とボサボサにのびた髪がこの男のだらしなさを演出している。


 名前をアルクという。


 この家の主であり、海人の今の仕事仲間。


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