ギア・ドール
第三章
スラム街からギアで飛ばすこと30分。
紫卯基地近くに広がる畑50個分の大きな荒野。
そこが、つい先ほどまで紫卯基地攻防戦が行われた、激戦区であった。
海人と菫は、そこで金になりそうな残骸品を見つけては拾い集めていた。
一応、連絡すればアルクがトラクターを持ってきてくれる手はずになっているが、それでも運べる量は限られる。
できるだけ少ない量で、大量の資金を獲得できるようなものを選ばなくてはいけない。
「しっかし・・・ほんまに、近か場やったんやな?」
回収作業を一時中断して、海人は東の方を眺める。
かなり遠くにはなっているとはいえ、まだ、目線の先にはスラム街が見える。
十分被害が及ぶ距離だ。
『海人~。ちょっと来て!』
海人が遠くを眺めながら、そんなコトを考えていると、突然、菫からの通信が入った。
声の様子から慌てているのがよく分かる。
「なんや?」
一応、通信機越しに声をかけてみるが・・・。
『いいから、すごいのがある!!』
そう言われれば、行かないわけにはいかない。
海人は再び皐月を宙に浮かせると、菫の元へ向かってスピードを上げる。
菫のいる場所は、500ヤード東。
皐月のスピードなら数分もしないうちにその姿を捉えることができる。