虹色パウダー
自転車のかごにボールを入れた桜子は、両手で自分の頬を挟んだ。
きっと顔が熱いんだろう。
「何、期待してんの?」
「え?何が!!!」
桜子は、またかごからボールを取り、胸に抱いた。
「ボール邪魔!!」
涼太は、腕を組みながら低い声を出した。
入学当時の涼太からは想像もできない『俺様』だ。
桜子はまたボールをかごに入れた。
すると、涼太はゆっくりと桜子の頭に左手を乗せ、右手を桜子の背中に回した。
包み込むように……
優しく、
そっと抱きしめた。