虹色パウダー
携帯
その日の夜、約束をしていないのに、涼太と桜子はあの公園で会った。
昼間は騒がしいセミの声も夜になると全く聞こえない。
静まり返った公園に響く声。
「何しに来たんだよ!!」
涼太は桜子を待っていたのに、偶然通りかかっただけかのような素振りをした。
「会えるかなって思って」
あまりに素直な桜子の返事に、涼太もちょっと嬉しそうな顔をした。
「携帯貸せよ」
涼太は、顔を背けたまま右手を桜子の方へ出した。
「え?」
桜子は、目をパチクリさせた。
「番号入れるから貸せ」
乱暴に右手を上下させた涼太。