虹色パウダー
「別に悩みはありません」
桜子は、視線を机に向けたまま答える。
「誰かにつきまとわれているとか、好きでもない男から言い寄られているとかあるんじゃないのか?」
「ないです」
トボ助……
教師なんだろ?
何必死になって口説こうとしてるんだよ。
「樋渡は、男子から人気があるから……僕は心配なんだ。何かあった時の為に……僕の携帯番号を教えておこう」
右手で触っていた携帯を左手に持ち替えたトボ助。
「樋渡の番号も知っておいた方がいいと思うんだ。赤外線通信で送ってくれ」
「本当に大丈夫です。困ったことがあれば、直接相談しますので、携帯番号とか別に教えなくていいと思うんですけど」
トボ助は、赤外線通信の受信準備完了。
携帯電話を広げて、その先を桜子の方へ向けたまま待っていた。
赤外線通信のやり方を知らない涼太と、
手馴れたトボ助。
僕は、涼太の方がずっと好きだと思った。