虹色パウダー
おわりのとき
ジングルベルジングルベル
誰もいなくなった教室に響く音楽。
軽音楽部の演奏の音が聞こえてくる。
今日はクリスマス。
僕は、ここへ来てから作ったパウダーを思い出しながら過ごしていた。
楽しかった思い出を振り返る時、僕はいつも思い出す。
力になれたかどうかはわからない。
でも、僕はみんなの仲間になりたくて、役に立ちたくて……
パウダーを振りまいた。
相談に乗ってあげることはできない。
頑張れよって肩を叩いてあげることもできない。
だから僕はパウダーを作った。
桜子は、徹夜でマフラーを編んでいた。
僕はマフラーを編む桜子の頭の上からいろんなパウダーを振りかけた。
桜、夏みかん。
スイカ、きんもくせい。
海、落ち葉……
僕の存在が消えないように。
せめて、そのマフラーの中に僕がいたという事実を編み込んで欲しかった。
確かに僕はここにいた。
ここで、みんなと青春を過ごしたんだ。
いなくなるけど、僕はここにいる。
ね、桜子。
そうだよね。