虹色パウダー
まだ入学していない私は校門から入ることはできないわけで……
男まさりな私は、裏門の前に自転車と停め、フェンスをよじ登る。
部活動でもやっていれば見学できたのに、この静かさでは誰もいないみたい。
入学式に迷子にならないように、学校の中でも探検するとしよう。
「はじめまして」
誰にも聞こえないくらい小さな声で、私は挨拶した。
門の横の水道の蛇口に座った小鳥の置物に向かって。
これから3年間、よろしくね。
私、樋渡桜子。
長所は、プラス思考。
短所は、意外に消極的。
綺麗に整えられた芝の上をゆっくりと歩く。
きっとお父さんが見たら、パター練習したいなんて言い出すんだろうな。
ゴルフが好きなお父さんだから。
この道もどこかメルヘンチック。
くねくねとわざと曲げられたような道。
道の脇には色とりどりの花が植えられていた。
名前はわからないけど、幼稚園の卒園式で校長先生から手渡された花と同じ。
赤や黄色、オレンジ色のかわいい花々。
「こんにちは」
声をかけてみる。