虹色パウダー
僕は1年5組の教室に飛んでいく。
涼太は今日もかっこいい。
上着を脱いで、シャツもひじまでまくりあげていた。
ボタンを上2つ外しているのもまたかっこいい。
涼太は、クラスの男の子とスーパーボールを投げ合っていた。
よくお祭りのボールすくいでもらえるようなあの弾力性のあるボール。
僕は涼太に近づいた。
そして、涼太が投げようとしたスーパーボールめがけて、ピコリンパウダーを振りかけた。
桜の香りはもう終わり。
今日は『メロンパンの香りパウダー』
1年5組は、メロンパンのおいしそうな甘い香りに包まれた。
涼太の投げたスーパーボールは、勢い良く教室の窓を抜け、廊下を転がる。
そして、走るサッキーと雪乃ちゃんの横を過ぎ、突っ立ったままの桜子の足元へ。
エメラルドブルーのスーパーボールは、僕の願い通り、桜子の足元でピタリと止まった。
「涼太、どこ投げてんだぁ?」
教室を飛び出した涼太は、廊下をきょろきょろしながら走る。
涼太の姿に気付いたサッキーと雪乃ちゃんは、大声を出すこともできずに、ただ顔を見合わせて、興奮していた。
「あああああ!!どうしよう!今のセブン君だよね?」
「うんうん。桜子の方に走っていったよ~」