虹色パウダー
「あの! お、お……お名前を」
緊張しまくっている桜子は、涼太の目にどう映っているんだろう。
僕から見ると、かわいくって仕方がない。
廊下の窓からは初夏の風が吹き込んでいた。
「名前?あ、俺? 日向丘涼太。そっちは?」
涼太は、手の上でスーパーボールをころころと転がしながら桜子を見た。
「樋渡桜子です!!!」
憧れのアイドルの握手会に来たファンみたいな桜子。
「また会ったな。何組?」
いいぞ、涼太。
その調子で桜子に質問を続けてくれ。
「1組です」
桜子は面接を受けているかのような態度で、背筋をピンと伸ばしていた。
僕は時計を見た。
やばい。
あと1分でチャイムが鳴ってしまう。
エイ!!
僕は時計に向かってパウダーを振りかけた。
少しだけ。
少しだけ休み時間を延長。