男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~



親戚や周りの皆が”会わせたい人”に連絡しているうちに、おじいちゃんは静かに息を引き取った。


医師から何かの説明を聞く為、おばあちゃんも部屋を出ていた。


そばにいたのは私だけだった。


「死亡の確認はご長男様がされますか?」


先生に聞かれ、私はお父さんに連絡するべく部屋を飛び出す。


入れ違いにいとこと、叔母さんが到着したから事実だけを告げ足早に外へ向かった。


父を失った叔母さんは真っ赤な瞳で……おばあちゃんを支えに行った。


「お父さん。今ね……亡くなったから……」


「えっ? そんな……急に……」


「先生が死亡の確認どうしますかって」


「誰がやっても同じ事だから。おばあちゃんか姉さんにやってもらって」


「わかった……伝えるね」


人の死に立ち会ったのは初めてだった。


初孫を見せてあげれられなくて……また少しだけ悲しくなる。


おじいちゃんからはどんどん管や装置が外されていって、あんなに笑顔で接してくれていた看護師さんは


「引き取りはまだですか?」


と事務的な顔でやたら急がせる。


悲しみの余韻になんて浸ってるヒマはない。


病院は人を診る所。


人じゃなくなった瞬間一秒でも早く排除しようとするのよ、そう教えてくれたのはお母さんだった。


「リュウジ……おじいちゃん亡くなったんだ」


クリーニングに出していたリュウジの喪服。それを急いで引き取り彼もこっちに来てくれる。


2週連続でおじいちゃんのお葬式なんて、こんな辛い事があるんだね。



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