男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~
それから……慌しく勤めている会社の子会社だという葬儀業者を呼び、お父さんは一人出かけていった。
私達はいとこ4人でおばあちゃんの家に行き、寝ていない体で少し掃除をする。
おばあちゃんの部屋には……何かを悟っていたのかもうすでに喪服が用意されていた。
そうだ。
私……思いっきり普段着だし。
結局何着か用意されていたおばあちゃんの喪服を借りる事にした。
「そっちにおじいちゃんの写真あるかな?」
お父さんからの電話でアルバムをひっくり返す。
「これなんかいいじゃない?」
おばあちゃんが決めたつい最近、だという知り合いの韓国の子が遊びに来た時の笑顔の写真。
寝不足でふらふらな体を支え車を運転して、写真を届けに葬儀会場へ向かった。
今日はお通夜、明日はお葬式。
そしてあさっては……私が就職する日。
一気にいろんな事が起こりすぎて頭の整理が出来なくて……。
それはお父さんも一緒だったみたいで、会場に着くとしきりに喪主様!!喪主様!!と引っ張られ困惑しながらも打ち合せをしている姿があった。
「お父さん、写真だよ」
「ありがとう。今日はいろいろ助かったよ」
「全然!出来ることがあったら何でも言ってね」
私には……お父さん、お母さんがいるから失った悲しみはまだわからない。
だけど、こうやって悲しんでくれる人がいるってのは羨ましい。
もし私がリュウジより長生きしたら……一人でいなくなるのかな?
そう考えたら怖くなるんだ。
そんなの……嫌だよ。