男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~
「どうだった、初出社?」
「ん、まだよく分かんないけど……頑張る」
そうとしか言えない。
リュウジの会社は今忙しくて2交替勤務。
早番の日だけは一緒に起きてお弁当を作って出勤する。
会社の帰りには買い物をし家に帰ってから洗濯やら、夕飯やら、掃除やら。
ただ、忙しさに追われた。
仕事は業界特有の記号や呼び名の部品を大量に扱っていてそれを覚えるだけで一苦労。
先輩に
「聞いてください、私覚えましたよっ!緑のバネは……」
なんて頑張った成果を聞いて貰おうと話しかけた。
そんな些細な事でも本当は喜んでもらいたかった。
私の発する言葉の一つ一つが先輩の心にのしかかって……見えない距離が出来ていたことに、全く気がついていなかったんだ。