男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~
「大人しいね」
「割と……そうかも」
そのぷにぷにしたほっぺを、軽くつっつきながら思う。
もし、この子がこんなに可愛らしくなかったら……
もし、この子がもっと泣いたりうるさかったら……
もし、この子がこんなに人見知りしない子じゃなかったら……
「矢口さんの所はまだ?」
何も知らない親戚が、お父さんに聞き
「うちは……まだです」
そう答えた瞬間、矢口家の家族のピースががっちりと噛み合った音を聞いたような気がした。
たぶん……親戚一同から、そして初めてのひ孫に目を細めるおばあちゃんの姿から
お父さんも、お母さんも、私も……ひょっとしたら弟も
次の集まりの時は自分達の番だと、そう想像したと思う。
そのくらいに、いとこの赤ちゃんの笑顔は可愛かったんだ。