男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~
怒りの原因は全てこれだった。
ここ1年ぐらいで不妊治療の基本方針が全国的に変わったというのだ。
私達の予定。
精子の有無を確認して今後を考える。
それを根底から覆す言葉を言われてリュウジは帰ってきた。
「検査だけだと体に負担もかかるし2度手間だからもし発見できたらその場で凍結保存なんだって」
それは……検査で精子が見つかった時点で顕微受精へのステップが始まるという事。
回収して凍結すれば当然その分検査以外のお金もかかり……更に毎年の保管料も必要となってくる。
その病院で保管する、という事はその遠い病院へ必ず通う事も意味されている。
すぐに……治療に移らなくても、だ。
ゆっくり悩む時間は無くなる。
というか……転職したばかりの今の私達にそんな大金が準備出来る訳もない。
リュウジが怒るのも無理はない。不条理な結果。
医者はいつも簡単に、そして当たり前のように言う。
「せっかく見つかったんでしたら保存してすぐに顕微受精に移ったらいいでしょう」
簡単に言わないでよ。
一般市民はそんなに裕福じゃないよ。
それとも?
不妊治療費も出せない私達には、子供を持つ権利など、親になる権利など無いとでも言いたいの?
事実を知る権利すら与えられない私たち。
一体これからどうしたらいいんだろう。