男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~
リュウジは親の前では無口になる。
だからうまく話せるかこっちもドキドキしてしまう。
「もしもし、俺?」
私は不安でしょうがなくて……ぴったりとリュウジに寄り添った。
電話の向こうの声は聞こえないけど、でもそばにいたかったんだ。
「子供欲しくてさ、でもずっと出来なかったじゃん?で、検査したら精子がいないって言われちゃって……」
どんな反応をしているんだろう?
普通の親だったら、ちょっとがっかりするのかな?リュウジは長男だし。
「うん、二人で仲良くやってるけどさ」
「そうかもしれないけどさ……」
「それはそうなんだけど……」
関西弁のお母さんに怒涛のように何かを言われているようで、すっかり聞き役のリュウジ。
そう、リュウジの両親は二人とも関西人。
転勤で関東へ引越しマンションも買っていたけれどしゃべり方はそのままでかなり強いのだ。
と、突然。
「葵、替わって?って言ってるけど」
……え!?
肝心な部分はまだ何も話してないのに……私!?
でも、ひょっとしたら私の方がうまく言えるかもしれない。
昔は緊張したけど最近普通に話せるようになって来たし。
とりあえず……頑張ろっ!!