男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~


そんなある日の事だった。


犬を飼うならダックスがいいよねーなんて世間話を過去にしていた野田さんからの突然の言葉。


「ダンナがどうしても、って言うからさ。ダックス飼っちゃったんだよね」


「え?もう家にいるんですか!?」


「そうそう、怖いかな~って思ったんだけど一番大人しそうな子選んだしあの子なら一緒にやってけそう」


3月になり、いい仕事が見つかったら~の条件に仕事を辞める意思だけは店長に告げてあったけれど代わりのパートさんもいなくて。


とりあえず4月末までは働きます!そう話していた私。


相変わらず上月さんのコドモも野田さんのコドモも休みの日に遊びに来ては懐いてくれていた。


それは嬉しいようであり、切ない気持ちもあるんだけれど……それを出さないようにして。


気持ちを表に出したら二人を、そして懐いてくれる子達を傷つけるだけだから。


「じゃあ今度わんこ見に行っていいですかぁ?」


「人見知りな子にしたくないから来てよ!」


そのわんことの対面が、意外な形で来週に迫っていることなど知らず……私は無駄に明るく、ただ適当な口約束を交わしていた。


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