男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~
私達も過去に一度真剣に犬を飼う事を考えたことがある。
買ってまで、の気持ちはない。
にゃんこ達と同様捨てられて困っている子がいれば助けてあげたいね、の精神だ。
そうして一度だけ、成犬のダックスとお見合いもした。
その子は結局他の家に引き取られて行き……一目見ただけで惚れ込んでいた私とリュウジはそりゃあがっかりしたのは記憶に新しいけれど……。
とはいえ今回の話は唐突すぎる。
「……って話があるんだけどどう思う?」
「葵は?飼いたいんだろ?」
「うん、でも犬はお金かかるって言うし……そしたら不妊治療どころじゃ無くなるかもよ?」
「それもアリじゃない?どんな子か会ってみないとわからないけど野田さんは知らない人に譲るよりうちで引き取って、子供達がたまに会えるようにしたいんでしょ?」
「そう言ってた。ね、子供いないんだし犬ぐらい飼っても大丈夫かな?」
「じゃあ今度の休み見に行ってみるか」
コドモイナインダシ。
最近私はこの言葉をやけに吐くようになっていた。
コドモイナインダシ、リョコウニイクグライ……
コドモイナインダシ、イヌヲカウグライ……
コドモイナインダシ、シュウショクしてバリバリハタライタッテ……
コドモイナインダシ……
コドモイナインダシ……
見えない何かから逃れるように、ひたすら自己暗示の如く繰り返していた。