男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~



「わざわざありがとね!」


野田家のインターホンを鳴らすと迎えに出てくれたのは本当にマスク姿の野田さん。


「そんなに辛いですか?」


「まぁね。ダンナさんもありがとう!」


こっちだよ~コドモ達に手を引っ張られて子供部屋に通される。


ゲームやおもちゃが散乱している部屋の片隅に犬用のゲージがあった。


そこには……


ふりふりふりっと初対面の私達にもくりくりした目をうるませて、しっぽを振ってくれる一匹の子犬。


「出してみる?」


「お願いします!」


まだ生まれたばかりで足元がおぼつかないのかよろよろと歩いて寄ってくる。


「こっちだよ!」


必死に呼びかける子供達だけど、当然自分の名前なんて分かっていない小さな彼は、自由になれた事を楽しむようにあちこち探検してはまたこっちへ帰ってくる。


「どう……かな?」


「カワイイ子ですね」


「でしょ?私もこの子なら飼えると思ったんだけどな~旦那なんてね、離れを作ってこの子と暮らすとか言ってるんだから」


子供達が寂しい思いをしないよう、出来るだけ早く結果を知りたい。そう野田さんは最後に付け足した。


「今日帰って相談しますよ」


振り向くと、リュウジはまだ子供達にチョッパー君と名付けられた子犬と遊んでいる。


彼は動物も、子供も大好きだ。


きっと飼うって言うだろう。


そしたら私達は5人家族だね。


犬だって、大切な子供だよね。


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