男性不妊と宣告されて~不妊治療闘想記~
第7章 昔のコト



矢口葵。


ずっと背の順では先頭さんをぶっちぎって来た私も産まれたトキだけは普通サイズの赤ちゃんだった。


2コ下にちょっと変わった弟がいる。


いや、矢口家では葵の方が異端なのだけど……。


お父さんとお母さんは大学で知り合ってそのまま結婚。


私立では市内で一番偏差値の高い大学だけあって真面目な両親である。


温和な父はいつもにこにこ笑っている。そう、私がお利口である限りは。


夫婦仲はありえないぐらい良く週末は映画やランチのデートをして過ごしている。


未だ人目を気にせずお母さんから名前に「ちゃん」付けで呼ばれるお父さん。


中、高、大とエスカレーターで上ってきたお坊っちゃんである。


画家を目指して大学を中退したり、ビートルズに憧れてギターを弾いてロン毛の時代あり、だったりしいていえば一番私に近いかもしれない。


ただし、残念ながら理解者とはちょっと違う。


< 77 / 314 >

この作品をシェア

pagetop