君の左手を







・・・は?







「え、今なんて」



「?
 
  
 だから、一緒に帰ろうって言ったけど」






私は眉間にしわを寄せた。

「…なんで?」






そう言ってから少し後悔した。



(・・・黙って一緒にかえっときゃよかったかも。)



私のあからさまな態度に、広瀬貴久は歯切れ悪く言った。







「・・・なんでって、






      吉野のこと好きだからだけど」








そう言った広瀬貴久の顔は、夕暮れのせいか、少し赤く染まって見えた。

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