『アリガトウ』と言いたくて。
≪悠優Side≫

「そんで今に至る」

萌未は最後にそう付け足した。

「そっか…」

「なーに暗くなってんの!凌央はカタすぎんのよ!」

明るく言う萌未。そして,

「ねぇ,これから服見に行かない?」

と続けた。


萌未,万引き止めるつもりないのかな…


そう思いつつも萌未と一緒に『買い物』に行くことにした。



10分後。

私たちは大きな服屋の中にいた。

「ねぇ,あのスカート可愛くない??やっちゃおっかな」

そう言って萌未はそのスカートを二枚持って試着室へ消えた。


「お客様,いかがですかー??」

試着室からあのスカート姿で出てきた萌未に,店員が声をかけた。

「うーん…可愛いけど…ちょっと大きいカナ★
すみません。やっぱり今日はいいっすー」

萌未は店員にそう告げ,もう一度試着室へと姿を消した。


出てきた萌未を見て,私は気付いた。


萌未が二枚持っていたスカートは,一枚になっている。

消えた一枚が萌未のカバンに入っていることを理解するのに,そう時間はかからなかった。

やっぱり萌未は慣れてる。

私は,近くにあったキャミソールを手に取り,カバンに入れようとした。


『後悔,してほしくねぇから…』


ふと,凌央の顔と言葉が頭に浮かぶ。

私は,このとき悪魔の囁きに負けた。


大丈夫だよ,今までだってやってたんだから。


私は手に持っていたキャミソールをカバンに詰めた。


それと同時に萌未が私に近づいてきて,耳打ちした。

「悠優,何か盗った??もう出るよ」

私は黙って萌未に続き,店を後にした。
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