『アリガトウ』と言いたくて。






「え…」

ここは,先日のカラオケBOX。


目の前には,呆然とした萌未の顔。


「アタシ,凌央が好きなの。
…付き合ってるの」


「まって,悠優。冗談おもしろくない」

私は強気だった。

「本気だよ」

「信じらんない…最低ッ!!」

萌未の涙は,痛いくらい私の胸に刺さった。


「殴っていいよ…」


覚悟はしてた。

でも…まさか,こんなに痛いとは。


萌未の拳は,私の右頬を捉えた。

体験したことのない激痛が顔にはしる。


私はそのまま後ろによろけた。


次は,パンッ!!と鈍い音と共に左の頬に痛みを感じた。


…見事な平手打ち。


「いった…」

「泣くのは卑怯よ!!私はもっと辛いの!!!」

萌未はもう狂っていた。


その後,数分間私を痛め続けた。


「はぁっ…はぁっ…」


「…気が済んだ?」


結局私は顔のあちこちに切り傷が出来てしまった。

これで終わると思ってた。


「そうだ…いいこと思いついた」


そう言った萌未。

向かった先は,一軒のブランド店。
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