『アリガトウ』と言いたくて。
嫌な予感がした。
萌未は言った。
「ここで,あのバッグを万引きしてきなさい」
嫌な予感は的中した。
「万引きは…もうしない。凌央と約束した」
そう…。
もう,万引きはしない。
そう強く誓ったんだ。
これ以上,凌央を裏切れない。
「いいから盗って来い。やったら許してやるよ…」
ニヤニヤと命令してくる萌未。
背中に,なにか冷たいものを感じた。
ゴクリを唾を飲む。
どうしよう…
これで最後にしようか…
でも…ッ!!
「早くしろよ…」
店に入り…
ゆっくりとバッグに手を伸ばす。
指先が微かに震えた。
「…っ!!」
ごめんね,凌央。
私はバッグをさっと掴み,店を走り去った。
「まぁ,許してあげるわ。凌央なんて別にいらないし」
萌未はそう言って去っていった。
私はその場に崩れた。
万引き―
しちゃったよ…