『アリガトウ』と言いたくて。
#07 私には…
□
「どういうことだよっ!?」
凌央の怒鳴り声に,肩をビクつかせる私。
「アタシは…凌央とは付き合えない」
私には,凌央と付き合う資格はない。
万引きするしか能がない私が幸せになることなんて…誰も許してくれない。
「顔の傷もだけど…萌未に関係あるのか!?」
そう言われて,昨日の出来事を思い出した。
心なしか,凌央の顔にも傷があった…気がした。
私は,首を静かに横に振った。
「ううん…萌未は関係ない。
それにアタシ…引っ越すから」
「は?」
「明日。親父の転勤で大阪に」
転勤の話は本当。
昨日,急に知らされた。
「嘘だろ…」
「ごめんね」
でも,これでよかったんだ。
「…じゃあ」
「あっ!おい待てよっ」
私は振り返らずに走り続けた。
涙は後ろに流れた。