『アリガトウ』と言いたくて。

#07 私には…




「どういうことだよっ!?」

凌央の怒鳴り声に,肩をビクつかせる私。

「アタシは…凌央とは付き合えない」


私には,凌央と付き合う資格はない。


万引きするしか能がない私が幸せになることなんて…誰も許してくれない。


「顔の傷もだけど…萌未に関係あるのか!?」


そう言われて,昨日の出来事を思い出した。


心なしか,凌央の顔にも傷があった…気がした。


私は,首を静かに横に振った。

「ううん…萌未は関係ない。
それにアタシ…引っ越すから」


「は?」


「明日。親父の転勤で大阪に」


転勤の話は本当。


昨日,急に知らされた。


「嘘だろ…」


「ごめんね」

でも,これでよかったんだ。


「…じゃあ」


「あっ!おい待てよっ」


私は振り返らずに走り続けた。


涙は後ろに流れた。
< 27 / 33 >

この作品をシェア

pagetop