『アリガトウ』と言いたくて。
エピローグ
あ-
新色のグロスだ。
グロスを掴んだところで,我に返る。
あれから,万引きは一度もしていない。
『大丈夫』
『一回くらいなら』
そんな悪魔の声が聞こえる日もあった。
いや,それが毎日だった。
でも,その度に凌央の声が聞こえるの。
『後悔,してほしくねぇから』
私はグロスをひとつ持ってレジへと足を進めた。
後悔,してないよ。
私はフッと微笑んだ。
凌央。
今,ドコで何をしていますか??
私ね,アナタに言いたいことがあるの。
ずっと言えなかった言葉。
『ありがとう』が言いたいの。
END