この世の果て
ルナの言うとおり、地面からは少しずつ草が生えてくるようになった。

とはいっても、水が殆どない地面では、彼らが生き続けるのは難しい。まばらな生命を産み出すことは、この星の最後の抵抗のようにも見えた。


最も、草が生えたくらいで現状が変わるわけではなく、僕らは相変わらず、食料を奪い合う。


「あいつら、結構もってやがったな。」

「これで、3日はイケるぜ。」

「いい女連れてやがったな。連れてこなくて良かったのか?」


「食いぶちが増えるとめんどうだろ。それに、うちのは言えばなんだってするだろ?飽きたらそのうち変えようぜ・・・」


当の女は、薬がきまっているのか、焦点の合わない瞳で僕らを笑いながら見つめている。

このアジトは昔、麻薬の精製工場だったらしく、地面を掘り起こすとたまに缶に入った薬が見つかることがある。

これは僕らの秘密の収入源になっていた。

女には、食料と混ぜて与えるから、本人は気付いていない。


そんな仲間の酷い仕打ちにさえ、僕はだんだん何も感じなくなってきた。



< 23 / 72 >

この作品をシェア

pagetop