この世の果て
多少歪んではいたし、ところどころに置いてある女神の像には、顔がなかったりしたが(それは母さんの焼けた写真を思い出させた)、
ここは僕らにとって、快適な場所だった。

何より鍵が重く、容易なことでは開かない。


だから、僕はいつでも家をでる時に、ルナの細い両肩に手を置いて、こう注意した。


「僕が帰ってくるまで、決して、このドアを開けてはいけないよ。」


うす茶色の美しい瞳が、僕の顔を映す。


「分かったね?」


彼女は何時だって素直にうなづいた。


「うん。」



「だから、リュウ」



「ん?」



「はやく、かえってきてね?」



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