この世の果て
あの日以来、ルナは一度も笑わなくなった。
夜は夜で、禁断症状で暴れ苦しむ彼女を、僕はただ、抱き締めることしかできなかった。
僕らの地獄を、欠けた顔の美しい女神だけが優しく見つめていた。
そんな風にして、何週間が、過ぎていった。
そういえば、例の女は僕たちが帰ってきた時には、もう姿がなかった。
そんなことは、どうでもよかったけれど。
僕らが飼っていた、あのうさぎも、どこかへ逃げてしまった。
逃げる前に、彼女の指を強く噛んだので、白い指先からは、燃えるような赤い血がひとすじ流れた。
僕はその指にそっと口づけを、した。