この世の果て
戦争が始まると、家族と母のお墓を残して、父はパイロットとして前線に赴くことになった。


「父さんはね、昔からパイロットになりたかったんだ。大人になってから夢が叶うなんて、夢にも思わなかったよ。」

そういって笑いながら、僕の茶色い髪をくしゃくしゃと撫で、行ってしまった。

何がなんだかわからないまま、僕は彼が夕焼けに紛れて見えなくなるまで、ちぎれるくらいに手を振り続けた。



遠くの空が爆弾で赤や黄色に光る度、僕は彼の、あの人の好い笑顔を思い出した。



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