この世の果て
彼の残った右手には、銀色のロケットが握りしめられていた。


中を見ると、ロケットの中の母の写真は半分焼け焦げてしまっていた。



「君のお父さんには、お世話になりました。」


そのまだ若い兵隊さんは、父と同じ部隊だったらしく、僕に色々なことを教えてくれた。

父の笑顔、冗談。

そして、父がついに一人の敵も殺すことがなかったこと、


父を殺したのは、僕と同じくらいの少年だったいうこと・・・。




彼は僕の作った涙草入りのスープを、泣きながら不器用に飲み、僕に深く一礼して去っていった。


スープは少ししょっぱくって、


汁だけを近くに住んでる猫にあげたら、そいつはごろごろ喉を鳴らしながら、美味しそうにそれをたいらげた。

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