平凡な憂の非日常
「誰が化け猫やねん!こんな美人が雨の中、独り立ってたら、声かけるんが常識やろ?」


………


「大丈夫ですか?」



「こんな夜中に、こんな美人が独り立ってたら、なんかあったに決まってるやろ?」


「察しろや!」


僕は、酔っ払いに絡まれてるだけだと思い、無視して帰ることにした。


てくてくてく


「あっ!ちょい待ち!どこ行くねん!」


てくてくてく


「ちょっと言い過ぎたんは謝るからなぁ待ってや~」


そう言いながら、女はついて来た。


てくてくてく


「自分、歩くの速いな~」


てくてくてく


「この辺に住んでるんや?」


てくてくてく


「ウチみたいな子をどこまで連れてく気やねん?」


てくてくてく


「黙って引っ張ってくれる人、ウチ好きやわ~」


てくてくてく


「…ちょっと返事くらいしたらいいやんか?」


てくてくてく


「……自分、童貞やろ?」


ピタ


「なんでついてくるんですか?止めてもらえないですかね?」


すると女は急に泣き出して


「ウチみたいな女の子が独りで困ってるのに、無視してばっかでホンマ東京者は冷たいわ~」


わんわんと号泣しだした女に僕は困りながらも

「近所迷惑だし、とりあえず泣かないでください。どうかしたんですか?」

と優しく声をかけ女を諭そうとした。

「もう無視せぇへん?」

「しませんよ」

「ウチを置いて家に帰ったりせぇへん?」

「しませんよ」

「ウチを襲ったりせぇへん?」

「しませんよ」

「ウチは女として、魅力ないんや~!」

声量アップで号泣し始めた。

誰か、もうなんとかしてくれ!
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