フェイク
「・・・櫂、私濡れちゃった。風邪引いたかも。」
あの時、何であんなことをしてしまったのかは正直今でも分からない。
櫂に同情したのかもしれないし、もしかしたら私もどこかで櫂のことを双子の弟としてではなく、1人の男として見ていたのかもしれない・・・。
「・・・家入るぞ。」
私の言葉を聞いた櫂は、すぐ後ろを向きマンションのオートロックを解除しに行った。
エレベーターの中でも櫂は終始無言で、1回だけ目が合ったけどすぐに逸らされてしまった。