ただ伝えたくて
圭は屋上を出ると軽く舌打ちをした。

「やっぱめんどくせぇ、飲み物買いに行くか…」


そう小さく呟くと、圭は携帯を取り出してメールを打ち始める。


『やっぱりやめる。今度飯奢るから!』


素早く打ち送信すると、圭は下の階の自動販売機に向かった。



販売機に着くと、そこにはさっきターゲットになっていた理沙がいた。


圭は少し驚いたが、気にせずに飲み物を買っていた。



すると理沙が急に圭に話しかける。


「あの、圭君って私と同じクラスだよね?」


圭と理沙は今は同じクラスだが、1年の時はクラスが違った。


それに二人は全く真逆のイメージだったため、話すことが全くなかったのだ。


「そうだけど、なんで?」

「だって、1年の時は全然話せなかったから…だから、よろしくね」


理沙は笑顔で圭に言った。

「あぁ、よろしく」


気づけばいつも不機嫌そうな顔をしていた圭が、かすかに笑顔になっていた。


圭はこの高校生活で久しぶりに、心から楽しさを感じていた。



これが二人の始まりとなった。

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