ただ伝えたくて
数日後、日曜日になりWデートの日がやってきた。



4人は無事、時間通りに集まった。

「みんな集まったけどさ、どこ行くんだ?」

圭は正也に尋ねた。

すると正也は、顔に笑みを浮かべて答える。

「やっぱり、デートといえば遊園地だろう!真奈も行きたがってたしな」

それを聞き真奈は嬉しそうに笑っていた。


この二人に何も言うことが出来ない理沙と圭は、黙って遊園地に行くことにした。


電車で数十分移動すると、遊園地に着いた頃にはもう12時近くになっていた。


「もうすぐお昼見たいんだね」

理沙は携帯で時間を見て言った。

「そうだね。じゃあ、どこかで昼食にしよっか」

その言葉を聞くと、4人は近くの飲食店に足を踏み入れた。


「結構混んでるな。みんな迷うなよ」

正也がそう言い、前に進み出すと、みんなも正也の後に続いて行った。


注文をして、4人はそれぞれ自分が食べる物を受け取ると、正也が先にとって置いた席に向かった。


しかし、理沙はみんなを見失ってしまい、必死で辺りを見渡していた。

理沙は必死に探したが、不安が広がるばかりで全く見つからない。

「みんなどこの席にいるのかな?」


その時、誰かが理沙の肩を軽く叩いた。

「誰っ!」

理沙が驚き振り向くと、そこには圭が立っていた。

「けっ圭くん!」

「遅かったから戻ってきてみたんだ。大丈夫か?」

圭は優しく微笑みながら言った。

「うん……ごめんね?」


理沙が申し訳なさそうに言うと、圭は理沙が持っていたのを奪い、理沙の手を掴んで歩き始めた。


「混んでるんだから仕方ないって、それより手ちょっと我慢しろよ?」


この時圭は余裕そうに言っていたが、内心ではとても緊張していた。


「うっ、うん」


理沙も胸の鼓動が早くなっていくのを感じていた。


そして、自分の心の奥に生まれ始めた気持ちを、少しずつ実感し始めていた。










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