転勤族妻の冒険~迷える狼ホストと子羊ちゃんの恋~
そんなオレに…


「キミも、親になれば分かるよ。」

「えっ?」


「子供の可愛さ。」

「そんなの、分かんねーよ」

「どうして?」

「どうしてって、おふくろ、オレ置いて、他の男と出てったんだぜ。そんな親達に育てられたオレが

子供の可愛さなんて、分かるはずがないじゃん」



「分かるよ。」

「はぁ?なんで分かるんだよ、そんな事。」



「キミ見てれば分かるよ。」

「はぁーーー?あんた、ヤッパ頭、おかしくない?

オレのどこ見て、分かるってんだよ!」



「はい。」


「なんだよ…それーー」

「鏡。」


「ンなもん、見れば分かるよ」

「いいから、見て、自分の顔」


「オレの顔?んなもん、毎日見てるって…」

「そうじゃなくて、今のキミの顔、鏡で見てみなよ。ホラ。早く」


そう言って、無理やり手に握らされて、自分の顔を、鏡で見せられた…。



「うわぁーなんだよ、この髪型、ボサボサじゃん」


「違うって!髪型なんてどうでもいいから!早く顔、見なさいよ!」

「はぁー?そんな怒んなくていいじゃん。ホント意味分かんねー女だなぁー」

「はぁー?子供が偉そうな事言ってないで黙ってみなさい!」

「ウッセーなぁ~ガキ扱いすんな!」


「ガキじゃない、まだ、ホラ!鏡に写ってるキミの顔

強がってるけど、どこにでもいる、普通の男の子と変わんないでしょう?」

「普通の…?」

「そう、普通の、普通の男の子だよ、キミは…」



普通の…男の子ーーー。




< 87 / 241 >

この作品をシェア

pagetop