枕草子・伊勢物語

 秋は、夕暮れ時の空が好き。
 橙色の大きな陽が山の向こうに沈み行くとき、烏でさえも家路を急ぐ。ほら、遠くに雁が群れて飛ぶ。(また明日、会いましょう。)
 風が騒ぎ、虫が鳴く。(静かに、静かに。)耳を澄ませば、夜は更け行き。

* * *

 ――みな、家へ帰る。

 かえろ かえろ
 温かな寝床へ

 かえろ かえろ
 穏やかな明日のために

 美しい夕焼け、明日もきっと晴れるでしょう。


* * *




 秋は、夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて、雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音(ね)など、はた言ふべきにあらず。
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