砂時計の村 夢魔の国のアリス

両方の口角がこれでもか、と引っ張りあげられていて、まるで三日月みたい。
それ以上開けたら、裂けちゃうんじゃない?
ていうか、もう裂けてるんじゃない?

おまけに体も変。
しましまなんだけど、ピンクと紫って、どんな趣味してるんだろう。

まったくもって、悪趣味、としか言いようのない猫は、木の上から、笑い声を上げながら私を見下ろしている。

「迷子、迷子。 アリスは迷子」
しゃ、喋った。
突然、猫は変な節をつけて歌い始めた。
さも、愉快そうに、半笑いで。
悪趣味なしっぽが、歌と一緒にひょいひょい動く。
……うーちゃんの耳よりむかつくかも知れない。

「迷子、まいーごー」
「うるさいなっ!」
私が思わず大きな声を上げると、猫は驚いたようで、ぴょんっと、木の上で体が跳ねた。
「怒ったー」
どこまでものんびりしたやつらしい。
今度は、怒った、怒った、などと歌い始めた。

もー、なんなのよ、コイツ!
私が怒りのあまり、足元に転がっていた小石を拾い上げたときだった。

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