高飛車女と副会長
時は戻って2週間前。

「転校って…どこに?」

どこにいっても同じだと決め付けていた俺は興味がなく、そっけなく聞いた。

オヤジは険しい表情のまま口を開いた。

「柚乃が入院している病院の近くだ。学校あったろ?」
その問いかけに、必死で記憶を辿る。

「……あ!そういやあった。」
…ちょっと素朴な感じの。
「え。でもあそこって普通の公立高じゃん。レベルも低いし。」

そう、オヤジがそんな至って普通の公立高に俺を転校させるなんて考えられなかった。
だっていつも、オヤジは学歴学歴っつって、レベルの高い学校に入らしたがっていた。

健気な俺は、そんなオヤジの願い、期待に忠実に答えようと昔から必死で勉強してきた。

中学もオヤジがいう、超ハイレベル校に入ったし、高校だってオヤジがいう高校に入ってみせた。

言いなりではないかと、情けないとため息をつく奴らもいるだろうが、仕方がなかった。

俺には両親の言いなりにならなければいけない、悲痛な理由があったからだ。

オヤジは能天気な俺の問いかけに軽く参っているようだ。

オヤジはさっきからの俺の口調からイメージしてみると、お堅い中年男性に思えるかもしれないが、少し違う。

オヤジは現在、35歳。顔は俺に似てて(俺が似てるんだけど)、結構容姿はいい方だ。
昔は自由人で、いい加減な天才だったそうで。今とは随分違っている。

変わってしまったのは、恐らく現実社会の厳しさのせいだろう。

中途半端な思いで、生きていけない、といつもオヤジは言っていた。

そこは同情する。
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