高飛車女と副会長
でも俺の人生なんだから、もう少し勝手にさせてもらいたかった。

と、話をもどして。

「柚乃の精神状態があまり良くないんだ。俺も仕事で中々会いに行けないからな。だからお前に、柚乃のそばにいてくれればいいと思ってな。」

オヤジはそういって、軽くうつむいた。

見ない内に小さくなったな、そう思った。

柚乃というのは俺の母親だ。つい最近体調をくずし、遠くの病院で入院している。

何度か見舞いに行ったが、あまりの変貌ぶりに毎回息をのんだ。

"死ぬ"とかそういう病気ではなくて、精神の病気らしい。

「え、じゃあ…俺どこで住むの?ここからじゃ通えないだろ?」

ここから母親の入院する病院まで結構な距離はある。通うのは無理だ。

「お前には向こうで、一人暮らしをしてもらう。マンションはもう借りてある。家賃は勝手に振り込んでおくから心配するな。」

あまりに重大な事がオヤジの口から淡々と出てくるので、あ、そうと言いそうになった。

アパートじゃなくて、マンションかよ。オヤジらしい…。

「あ、でもお前、家事も何もやった事ないからな。まともな暮らしは出来ないだろうから、中野をつれていけ。中野にも、もういってある。2人暮らしだな。」

最後の言葉にオヤジは無理矢理笑った。ように見えた。
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