高飛車女と副会長
蛇口から出る水の音が、二人の間の沈黙を和らげてくれるかのようだった。

中野は俺に背中を向けたまま、言った。

「いねぇよ。友達なんか。」
感情がなくなった、無の声だった。

「いない?」
その性格のせいで?

「てめえと一緒だよ。周りから浮きすぎて、どうしようもない立場にいつの間にかなってた。そんだけだよ。」

その口調は決して投げやりなんかではなく、どこか完璧に割り切ってスッキリしたような口調だった。

こいつにも色々あったって事か。

「ついでに女は、この仕事が決まった頃にすっぱり振った。未だに、たまにメールくるけど。」

忙しなく動く中野は、次は風呂を沸かしに行った。

俺は、その間に歯磨きをすませる。

「やっぱ、女遊びしてたんだ。」

「まぁな。あんま楽しいって事もなかったけど。お前も一時期遊んでたろ。」

「!何でそれ!?」

てめえには言ってねえぞ!!
風呂場から出てきた中野はイタズラ気に微笑んだ。

「お手伝いの板井さんから聞いた。大抵教えてくれるぜ?お前の事なら。」
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