怪盗ブログ


沈黙、約5分。


「まだかしら」

「………」

無言。


「ちょっときつくて痛いんだけど」

「太ったんじゃない?」

「さっき縛ったばっかりでしょ!!!」

「………」

また無言。

この沈黙には一体どんな意味があるの。
本当に意味がわからない。

もういいや。
時間が惜しい。

「……さっさと仕事の話してよ」

解かなくていいからさっさと先に進めて欲しい。

そう諦めた、そのとき。

十星は縛られた自分の右手であたしの左手を握った。


「なっ」


これはいわゆるカップル繋ぎ!?


「や、やめてよ!」

こんな繋ぎ方、大貴とだってしたことないのに!

なんとか逃れようと、握りしめられた手をいろいろに動かしてみるものの。
十星の力の方が強い上、縛られてるせいで動かすのすら不自由。


「うーん」

抵抗するあたしを気にする風でもなく、十星は前をぼんやり見たまま呟いた。

「上手くいかない」

眉をしかめて、首をかしげて、十星は黙って縛っていた紐を解いた。

あたしは自由になった手を引っ込めて、十星の手から逃れた。


「はぁ……やっと……」

うっすら痕のついた手首を見てほっと、息をもらした。



それにしてもこいつ、何がしたいんだろう。



「十星」


何やら考え込んでいる十星の顔を覗き込む。


「あんた今日なんか変じゃない?」


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