怪盗ブログ
その部屋は壁一面が本棚になっていて、ほぼ全ての棚が本で埋まっていた。
ドアの真正面にある窓から入る月明かり。
それだけ頼りの暗い部屋の中央には机があり、その上にパソコンが載っている。
大貴の部屋にも本は沢山あるけれど、こんなにはない。
ここの十分の一もないと思う。
大貴の場合、ほとんどデータで管理しているからかもしれないけれど。
あたしは勉強が嫌いだから図書館なんかに縁はない。
こんなに沢山の本に囲まれて生活したこともない。
だけどここは、不思議と身体に馴染むような感じがした。
あたしが驚いて立ち尽くしている間に、十星はパソコンを起動しファイルを出した。
「座って」
目で促されるままに座ると十星は説明を始めた。
「これが次の獲物に関するやつ。こっちが仕事場の資料。3Dも作ってある。で、これは警備の予想。何パターンかあるから」
あっさり言い終えると十星は部屋から出て行こうとした。
「え、待って」
「なに」
「え?なにって……あたし1人で見るの?」
「一緒に見たい?」
少し寂しげに笑う。
「いや、別に」
そういうわけでは……
あたしが答えると
「俺少し寝るから、わかんなかったら起こして。1時間後には起きるけど」
「わかった」
十星は部屋から出て行く後ろ姿を見届けて画面に向き直った。
『別に』は少し冷たかったかな……
あまりにも落ち込んでいる様子なので、罪悪感を感じてしまう。
……おかしいな。
被害者はあたしなのに。