怪盗ブログ
「帰るぞ」
暗がりの部屋で、逆光で、涙で霞んで。
大貴の表情はわからない。
「王子様に見つかっちゃった」
十星が言う。
そしてあっさりあたしを解放した。
「さすがSランクだね。気付かなかったよ」
楽しそうな十星の声。
あたしの頭はひどく混乱していて、何を最優先すべきか考えるけれど、考えるほどにそれは遠ざかった。
考えなきゃ。
そう思うほど、に涙が零れた。
安心が思考を止める。
何より、安心した。
大貴が来てくれて。