怪盗ブログ
「井乃月の手練がどうせ警備につくだろ。そんな心配いらねーって」
大貴は心配していないようにしか見えない顔で、味噌汁を飲み干した。
「掛け軸が盗られたくらいじゃあの親父は眉ひとつ動かさないだろうし、それを俺が心配するのもおかしな話。だから俺には関係ないことだ、が……」
食べ終わって空になった食器を重ねながら続ける。
「千夏、見たいか?」
「何を?」
「十星の盗み」
「え……」
「見たいなら、会沢に行けば見れるだろ」
大貴がそんなことを言うとは思わなかったので、反応に迷う。
見たい。見てみたい。だけど。
いいのかな……?
あたしが何も言わないので、大貴が言う。
「別に、見たいなら俺もついて行くし。あいつが千夏に近付くようなことはねーよ」
それでも、否定の「いい」を口にした方がいいような気がする。
だけど、大貴の微笑みを信じて恐る恐る口に出した。
「……みたい」
「わかった」
「じゃあ3年振りの里帰りだな。俺は」
そう言って立つと、食器をキッチンへ運んで行った。
あたしも急いで食べ終えた。