怪盗ブログ
大貴はリビングにいた。
大貴ならなんとかしてくれるんじゃないかと思った。
でも、こんなことを大貴に頼るなんて、気が進まない。
他の男につけられたキスマークをどうやって隠すか、それを恋人に相談するなんて。
そう思いながらも、他の手も思いつかなくて結局大貴に声を掛けた。
かかった時間はほんの十数分。
大貴は首の痕に特殊メイクを施してくれた。
こんなことまで出来るなんて知らなかった。
「学校まで送る」
車のキーを持って言う大貴。
「いいよいいよ!今日は大学行く日でしょ?」
まさか十星も白昼堂々何かしては来ないだろうし。
今朝のこともあるし、心配してくれるだけで嬉しかった。
「行ってきます」
左手をひらひら振ってスニーカーに足を入れる。
「……気を付けろよ」
「うん」
玄関で見送られ、部屋を出た。
同じ階にある十星の部屋の前を早足で通り過ぎる。
通り過ぎるときには、あたしの制服のリボン返ってくるのかな、なんて考えていた。
朝の大貴の言葉とキスで、十星に襲われかけたことはもうほとんど気にならなくなっていた。