怪盗ブログ
……え。
「な、何でですか」
「なるほど」
大貴は納得した様子だ。
「え、え、どうして?」
「千歳ってのが、千夏を連想させるだろ。通り名も"千季"で似たようなもんだしな」
……そうなんですか。
深くは聞かないことにした。
大貴のお父さんにあまり馬鹿だとは思われたくない。
手遅れかもしれないけど。
会沢親子は揃って腕組みをして考え込んでいる。
「おまえを盗むってのは、さらうってことか?」
「ええっ」
さ、さらってどうするんですか……
「しかし『摘む』だからな、獲物が内藤の娘なら『盗む』とも限らん」
……どっちにしても、あたしなんですね。
「まあ、用心しておくんだな」
会沢藤五郎はそう言うとすっと立ち上がった。
入ってきたときと同じふすまを開け、頭だけ振り返ると横目であたしたちを睨んだ(ように見えた)。
「もうすぐ井乃月の連中が来る。この客間におまえらの居場所はないぞ」
「わかった」
大貴が答えると会沢藤五郎は何処かへ行ってしまった。