怪盗ブログ
「ひっ!」
会沢藤五郎は廊下の天井に張り付いていた。
客間で会ったときと変わらぬ様子で、あたしを見下している。
「ま、迷ってしまって。会沢さんこそ何を……」
「訓練だ」
そう言って床に着地した。
「身体はすぐ鈍る。もう引退したが、何時何があるか知れんからな」
会沢藤五郎は芸術方面で活躍していた、と十星の資料にあったけれど……
その傍ら盗みでもやっていたのかな……?
だって、こんな訓練が必要になる芸術って、何。
「大貴の部屋だろう。ついてこい」
会沢藤五郎は座ったままのあたしを置いて歩き出した。
あたしは急いで立ち上がる。
「あ、ありがとうございますっ」
置いていかれまいとあたしは自然と早足になった……が。
なんか、遅い……
会沢藤五郎はその長身に似合わない速さで歩いていた。
あたしでさえ少しゆっくり歩かなければ、追い越してしまいそうだ。
「あいつとは上手くやっているのか」
あたしがそのスピードに慣れてきた頃、会沢藤五郎は背を向けたまま言った。